愛の成せる業







何せ付き合いは長いんだから、一目見りゃ大体分かるんだよ。

今、こいつが機嫌いいのか悪いのか、これからどんな言葉が飛び出すのか。この綺麗な 顔を見れば、
おおよその見当はつくんだ。

だから今日も、俺を部屋に迎え入れてくれた時にすぐ分かったよ。

ああ何か言いたいことがあるんだな、それもあんまりいい内容じゃないな、って。







テレビでの公開対局の生中継を終え、その足でその中継を見ていたであろう佐為の部屋 に直行した俺は、部屋にあげて貰うと、リビングまで足を進めてから、前置きせずにすぐ質問を浴びせ始めた。 敬語で。

「……中盤の攻めが甘かったですか」

「いーえ?」

「124手目のカカリは軽率でしたか」

「別に?」

「じゃあ……更にその後にマズイところが……」

「さしてありませんでしたよ?」

小首を傾げながら、佐為はさらりと そう言う。

「……じゃあ何?何が言いたいんだよー、あるんだろ?何か俺に 言いたい事が!」

佐為は片手を腰にあて、ふう、と溜息をつきながら斜め 上を見上げる。

「あのねえ、ヒカル」

どんな小言が来るのだろうと思いながら、俺は次の 言葉を待つ。

「あなた、対局中に爪噛んでるでしょ?」

「……は?」

「考えてる最中、こうやって片手の親指咥えてるじゃないですか。それで眉 間に皺寄せて、じとーっと盤面見詰めて」

佐為はデスノートのLみたいに親指を自分の口に持っていき、眉間に皺を寄せて見せた。
超絶美形はどんな動作もさまになるんだなあ、などとうっかり思ってしまったが、 すぐ我に帰る。佐為の言いたいことってこれか?ていうか、俺あんなこと対局中にし てたっけ?

「記憶にないんですね?じゃあ無意識にやってるんでしょうね」

そう言うと佐為はまた、ふう、と溜息をついた。

「そりゃ、こんな動作の一 つや二つで、ヒカルの可愛さが損なわれるわけじゃありませんけどね、でも
やめましょ うよー、せっかくヴィジュアルがいいのに勿体無いですよ、あの癖。特にテレビじゃ アップにされるんですから。爪噛みながら眉間に皺寄せてる顔が、画面に大写しになって 全国放送されると思うとねえ……」

心底惜しそうな顔をしながら、ソファにどしんと腰を下ろす佐為。

「…………お前、対局見ろよ」

俺は呆れて脱力し、その勢いで床に座り こんだ。

「見てましたよ、対局もちゃんと。それと平行してヒカルの様子も じっくり観察してたんですから」

「……器用だな」

「んー、 やっぱり愛の成せる業ですかねえ」

「…………」

そう言われてしまうと、 俺も返す言葉が見付からなくなってしまう。

「ところで……」

多分赤くなっているのであろう俺の顔を見ながら、佐為が切り出した。

「ヒカル、さっき私が何も言わないうちから、何か言いたいことがあるんなら、とか 何とか言ってましたよね?何で分かったんです?」

ささやかながら、仕返しのつもりで俺は言ってやった。

「愛の成せる業、 じゃないの?」








うわぁいバカップル!!(笑)しかしあたくし、「はやうた」設定で場所は佐為の部屋、
っていうシチュばかり書いてますわね。とりあえず、これを50000HIT記念SSとさせて頂きます。







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